そもそもバイアスロンってどんな競技なの?
夏季オリンピックの近代5種競技に対してバイアスロンは冬季オリンピックの近代2種競技と呼ばれるバイアスロン。
ざっくりと説明をすると、クロスカントリーをしながら途中でライフル銃を使って的を打ち抜き、そしてゴールを目指す種目です。最終順位はスキー距離の走行時間と射撃の精度によって決まります。
オリンピック種目にはクロスカントリーという種目が単体でも存在しますが、
クロスカントリー + 射撃 = バイアスロン
という風になります。
競技としての歴史は古くからあり、18世紀後半にはスウェーデンとノルウェーの軍人が行ったのが始まりといわれていますが、意外にも冬季オリンピックの正式種目になったのは男子は1960年のスコーバレーオリンピック、女子はアルベールビルオリンピックとなります。
バイアスロンというスポーツを始めるまでの道のり
冒頭で説明したように、バイアスロンという種目は気軽に始められる競技ではなく、本物の銃を扱うため、日本国内では警察官や自衛官、海上保安官、麻薬取締官、刑務官、入国警備官、入国審査官、在日米軍日本人警備員、税関職員以外、また標的射撃、狩猟、有害鳥獣駆除を目的とする所持許可申請に対して許可が降りた人のみが行うことのできる競技となります。
さらに猟銃は20歳からという年齢制限もあるので(標的射撃目的に限り日本体育協会からの推薦があれば18歳でも可能とのこと)、やはり普通の社会人、大学生としての生活を送っている限りは出会うことのない競技となります。
以上からバイアスロンを始めるためには、まずは銃砲所持資格を取得して初めてスタートラインに立ち、そこからオリンピックを目指すことになります。
ルール
引用 : トリノオリンピックバイアスロン競技コース: TK Sports Shooting
上記は2006年に行われたトリノオリンピックのバイアスロンのコース図です。
基本的にはコースを周回して、一番早くゴールをする事が原則的なルールですが、左上にバイアスロン射撃場、そしてすぐ右にペナルティエリアがあります。
この2つがバイアスロンという競技をより面白くしている場所となります。
競技の基本的な流れ
- 選手はスタートを切ると、一生懸命周回コースをクロスカントリーで走ります。
- バイアスロン射撃場で50m離れた直径10cm前後しかない的を射撃します。
- 射撃で外した場合、外した分ペナルティエリアで外した分だけのペナルティとして、余分に多く走らされます。(もしくは単純に滑走所要タイムにペナルティタイムが加算。)
以上がバイアスロンという競技の基本的な流れになりますが、バイアスロンの醍醐味ポイントとしては、スタートを切ってしばらく走り、疲れた直後に射撃を行わなければならない、つまり、心拍数が最大に上がり、息が切れてる状態で、遠くに小さくしか見ることのできない的を誰よりも早く打ち抜かなければならないということです。(さらに種目によっては4~5周コースを回ります)
当然、そんな状態ではなかなか当てることはできないため、多くの選手がペナルティエリア送りにされてしまいます。
ペナルティエリア送りにされるということは、余計に多く走らなければならないので、うまく射撃ができないと、いつまでも走り続けなければいけないという想像ができないほど非常に過酷な競技ということになります。
バイアスロンは体力だけがあっても、射撃の腕がなければ永遠とゴールができず、射撃の腕があっても体力がなければ、早いタイムを出す事ができないため、バランスよく結果を出すことのできる選手が一番メダルに近い選手ということになります。
バイアスロンの中にも6つの種目がある
バイアスロンには男女別で5つの種目、男女混合1種目の計6つの種目がありますが、それぞれでルールが異なります。
- 個人(インディヴィデュアル)
- 短距離(スプリント)
- 個人追い抜き(パシュート)
- マススタート(一斉スタート)
- リレー(男女別)
- ミックスリレー(男女混合)
ここからは、それぞれの種目について説明していきます。
個人(インディビデュアル)
- 各選手は30~60秒毎に時間をずらしてそれぞれスタート
- 合計20km(女子は15km)の距離を滑走し、その間に合計4回の射撃
- 1回の射撃で4発撃ち(1回当たり5発発射)、外すとペナルティで1分が加算
- 射撃順序は伏射、立射、伏射、立射の順序
- 滑走所要タイムとペナルティタイムの総合タイムを決定
男子 : 走行距離20km(4km×5周)
4km→伏射(5発)→4km→立射(5発)→4km→伏射(5発)→4km→立射(5発)→4km
女子 : 走行距離15km(3km×5周)
3km→伏射(5発)→3km→立射(5発)→3km→伏射(5発)→3km→立射(5発)→3km
短距離(スプリント)
- 選手は30~60秒間隔で、1人ずつスタート
- 合計10km(女子は7.5km)の距離を滑走し、その間に合計2回の射撃
- 外した数1発につき150mのペナルティー滑走を行う
- 短距離(スプリント)では、滑走所要タイムで順位が決定
男子 : 走行距離10km(3.3km×3周)
約3.3km→伏射(5発)→約3.3km→立射(5発)→約3.3km
女子 : 走行距離7.5km(2.5km×3周)
2.5km→伏射(5発)→2.5km→立射(5発)→2.5km
個人追い抜き(パシュート)
- 出発順序は短距離(スプリント)と個人(インディビデュアル)の結果をもとに決定
- 一般的に短距離(スプリント)の結果をもとに出発順序を決定
- 後走者も同様に前走者との時間差分の時間が経過した後、出発し後走者が前走者を追い越したら勝ち
- 合計12.5km(女子10km)を滑走し、その間に合計4回の射撃
- 射撃順序は伏射、伏射、立射、立射
- 1発外すたびにペナルティとして150mの滑走がプラス
男子 : 走行距離12.5km(2.5km×5周)
2.5km→伏射(5発)→2.5km→伏射(5発)→2.5km→立射(5発)→2.5km→立射(5発)→2.5km
女子 : 走行距離10km(2km×5周)
2km→伏射(5発)→2km→伏射(5発)→2km→立射(5発)→2km→立射(5発)→2km
マススタート(一斉スタート)
- 約30名の選手が出発エリアにある自分の出発番号の前で、出発信号に合わせて一斉にスタート
- 合計15km(女子12.5km)を滑走し、走行中計4回の射撃
- 射撃順序はパシュート競技と同じ
- 標的を外しただけ150mのペナルティー滑走を行う
- ゴールに一番先に到着した選手が優勝
男子 : 走行距離 15km(3km×5周)
3km→伏射(5発)→3km→伏射(5発)→3km→立射(5発)→3km→立射(5発)→3km
女子 : 走行距離 12.5km(2.5km×5周)
2.5km→伏射(5発)→2.5km→伏射(5発)→2.5km→立射(5発)→2.5km→立射(5発)→2.5km
リレー(男女別)
- 各チームは4名で構成され、男子は7.5kmずつ、女子は6kmずつ走行
- 射撃は男子は2.5km及び5km走行後に、女子は2km及び4km走行後に行われる
- リレー競技は3発の予備弾が与えられ、その予備弾でも標的をすべて外してしまった場合、スプリント競技と同様に、150mのペナルティー滑走を行う
- 各チームの初走者は同時に出発し、2番目の走者からは交代エリアに入ってきた前走者と身体が接触した後スタート
- フィニッシュした着順で勝敗が決定
男子 : 走行距離 7.5km(2.5km×3周)×4人
第1走者2.5km→伏射(5発+予備弾3発)→2.5km→立射(5発+予備弾3発)→2.5km→次の走者へ
女子 : 走行距離 6km(2km×3周)×4人
第1走者2km→伏射(5発+予備弾3発)→2km→立射(5発+予備弾3発)→2km→次の走者へ
ミックスリレー(男女混合)
- 各チームは男子2人女子2人で構成され、男子は7.5kmずつ、女子は6kmずつ走行
- 走者出発順序は女子→女子→男子→男子
- 射撃は男子は2.5km及び5km走行後に、女子は2km及び4km走行後に行われる
- リレー競技は3発の予備弾が与えられ、その予備弾でも標的をすべて外してしまった場合、スプリント競技と同様に、150mのペナルティー滑走を行う
- 各チームの初走者は同時に出発し、2番目の走者からは交代エリアに入ってきた前走者と身体が接触した後スタート
- フィニッシュした着順で勝敗が決定
走行距離 7.5km(2.5km×3周)×2人+6km(2km×3周)×2人
2km→伏射→2km→立射→2km→2.5km→伏射→2.5km→立射→2.5km→第4走者フィニッシュ
注目選手
- 男子 : 立崎幹人
- 女子 : 立崎芙由子、古谷沙理、田中友理恵、三橋李奈
バイアスロン男子の立崎幹人選手、女子の立崎芙由子選手らが出場します。実は両選手はご結婚されており、夫婦で平昌オリンピックへのぞみます。
平昌オリンピックで成果を出すため、普段からお互いを支え合い高みを目指してきたことと思います。夫婦ともに大舞台で結果を出してきた実績のある実力者ですが、今回も普段からの練習の成果を発揮できるよう万全に備えて平昌で戦って欲しいところです。
あとがき
以上、【初心者のためのバイアスロン解説】でした!
言葉を包み隠さずいうと、日本ではどうしても一般の方々には身近ではないマイナー競技となるため、応援する方も多くはいないのかもしれません。しかし、それでも4年間必死に練習を重ねてきた方々がいるという事も事実です。
本記事を読んで少しでもバイアスロンという競技を知り、平昌オリンピックで日本チームを応援する人が増えれば、この記事にそれ以上の価値はない事と思います!
みんなでバイアスロンを応援しましょう!!