
スキーとは無縁の海の近くで育ったお嬢が、元ナショナルチームのアルペンスキーのD選手に【アルペンスキー】の醍醐味を質問します!
アルペンスキーとは?という初心者の方でも分かりやすく解説します。

「いきなりなんだよ」

「だって、Dはアルペンスキーやってるんでしょ?しかも割と本気で。」

「割と、は余計だバカ」

「まあ、とにかくやってるんでしょ?」

「まあな」

「やってるからには、何か、楽しいことがあるんでしょう?」

「まあ、楽しみがあるからこそ、辛いことも乗り越えられるからな」

「それ、教えてよ」

「急にそんなこと聞いて、どうしたんだよ」

「いいじゃない、聞いたって」

「まあいいか、そんなに聞きたいんなら、オレが感じてるアルペンの楽しみをバッチリ紹介してやるぜ」

「でた、そうやって、無駄に張り切るやつ」

「うるさいな、お前はいつもそうやって…」

「早くしなさいよ」

「…」
アルペンスキーの種類とスピード

「まず何と言ってもスピードだ、アルペンには、四種目あるが、これだけのスピードが出る」
- ダウンヒル(80㎞~140㎞)
- スーパーG(60㎞~120㎞)
- ジャイアントスラローム(40㎞~80㎞)
- スラローム(30㎞~60㎞)

「まあ、こんなもんかな」

「すっごい幅があるのね」

「急斜面もあれば緩斜面もあるし、新雪の時もあればアイスバーンの時もあるしな。」
ダウンヒル(滑降)

「ダウンヒルってのが1番速いのね。ってか、本当に速いわね」

「この種目は50m以上の旗門間隔で行われるからな。ワールドカップクラスになれば、140㎞を上回ることだってある。だけどこの種目の公認大会は今日本では行われていないんだ。」

「なんで?」

「コースの確保と大会運営が難しいからだ。ダウンヒルにはとても長いコースが必要だし、そのスピードから、レースの安全性を確保するのにすごい労力が必要になるのさ。」
スーパーG(スーパー大回転)

「ふーん、じゃあ、スーパーGは日本でもやってるの?」

「うん、スーパーGはやってるよ。今年の全日本選手権で大体100㎞くらいの平均速度だったかな」

「これが、スーパーG。空気抵抗を避けるため、クローチングフォームと呼ばれる体勢をなるべくキープするよ」

「あんたも、100㎞で滑ったわけ?」

「まぁ、滑ったね」

「うわぉ」
ジャイアントスラローム(大回転)

「1番メジャーな種目がジャイアントスラロームだ。冬季国体のアルペン種目はこのジャイアントスラロームで競われるよ」

「ジャイアントスラロームは、30m程の間隔の旗門を通過して競うんだ。スピードとターン技術の両方が必要になる」

「中ぐらいの種目ってわけね」

「まあ、そういうことだね。ジャイアントスラロームがアルペンスキーの基本だと言われているよ。」
スラローム(回転)

「スラロームってやつはずいぶんゆっくりじゃない?」

「とんでもない、ターンの素早さでいえば最速の競技だ」

「スラロームは、10m程の間隔で旗門が立っている。間隔が狭いもんだから、ポールの内側を通るために、ポールをぶっ叩いて滑っていくんだ。」

「これ。逆手って言われるんだけど、中々カッコいいシルエットでしょ?」

「…まあ確かにアグレッシブね」

「ダウンヒルやスーパーGは高速系と呼ばれ、非常に広い間隔の旗門でタイムを競う。それだけに出るスピードは尋常じゃない。」

「生身で100㎞以上とか、クレイジー以外の何者でもないわ」

「その高速ターンに、3ヶ所のジャンプセクションも加わるしな」

「あきれた…」

「だが、高速系種目はハマっちまったら最高だぜ。自分が空気を切り裂いていく音、ジャンプ時の緊張感・高揚感。そして何より、ハイスピードで滑りきった時の達成感!病みつきとは正にこの事だぜ!」

「なんてこったい…まあいいわ。それで?あとの2つは?」

「ジャイアントスラロームとスラロームは技術系種目と呼ばれている。一本の競技でおおよそ40~70ターンをする。スピードは低くなるが、ターンテクニックが要求され、ミスのリスクは高くなる。」

「こっちはポールにアタックする、といった感じね。」

「ターンのリズムが早いので、高速系とはまた違ったスピード感を楽しめる。」

「何だか、ポールに当たりまくって痛そうね」

「高速系は、雪上のF1。技術系は、雪上の格闘技と比喩されるくらいだ。どうだ?ワクワクしてくるだろ?」

「あんた、私はか弱いの子よ?」

「…」

(殴る)

「いてぇ!お前はそんなんだから…」

(殴る)

「わかった!すまなかった!」

「ふぅ。まあとりあえず、あんたがスピード好きでアタック好きなクレイジーピーポーだってことはよく分かったわ」

「誰がクレイジーピーポーだこら」

「あんたは、昔っから危なっかしいのよ。だから私は…」

「あっ!もうトレーニングの時間だ!わりぃ、今日はこんなところで勘弁な!」

「ちょっと…」

「また続きは明日話してやるから!バイビー!」
タタタタタタタッ!

「もう!」

「…明日も聞かせてよね」