まえがき
アルペンスキーの本場はヨーロッパです。
日本のアルペンスキー界も多くの人が情熱を持って取り組んでいますが、アルペンスキーについては、発展途上国である。というのが一般的な認識です。
日本は、まだレースの指導要領が確立されておらず、指導者一人ひとりの経験や感覚に頼る部分が多く、手探り状態になっています。
これは、オフシーズンの陸上トレーニングにおいても同じことが言えます。
アルペンスキーも他のスポーツ同様に運動メカニズムが非常に複雑で難解です。
ただ、アルペンスキーは道具を扱う部分が多く、他のスポーツ以上に研究対象が広く、研究が求められます。
しかし、アルペンスキーは日本ではそれほどメジャーなスポーツとは言えず、予算も取ることができないためスキー先進国と比べると研究が進んでいないというのが現状です。
【難しい競技×マイナースポーツ×日本3】
という相乗効果が、より難しい状況を作っているのです。
そのような理由から「よし、本場のコーチに教わろう」と考えるアルペンレーサーも少なくないわけです。
そんなアルペンスキーの本場のヨーロッパのコーチに指導してもらう時に押さえておきたいポイントをまとめてみました。
国選び
まずは、何といってもスキーを学ぶ国を選びます。
意外かと思われますが、国選びも非常に大切なポイントです。
分かりやすいところでいうと、日本では両足加重を軸とした指導法、対してオーストリアは外足加重を軸に基本に忠実な指導法。
基礎を研究し、基礎から理論立てて指導を確立しているためオーストリアは安定して世界でもトップ選手を輩出し続けることが可能となっています。
国によって指導方法が基づく理論が異なります。
あなたなら、どこの国に行きますか?
本場ヨーロッパと言っても、国は沢山ありますね。
スキー王国のオーストリア?
トップ国であるドイツ?イタリア?スイス?フランス?
もちろん、とにかく早く滑れるようになりたい!という気持ちよりも、自分がどういう滑りを目指したいのかというのも国を選ぶ1つの基準とするのも良いと思います。
(もっとも、その国に行ったからといって、完全に憧れた滑りになれるというものではなく、あくまでもコーチはあなたの滑りの長所を指導理論に基づいて伸ばす指導をすると思います。)
他にも、好きな選手、知り合いのススメ、行きたいスキー場、食べたいものでも理由はなんでもオーケーです。
まずは国を選ぶこと。これ1つで、全てが動き出します。
言葉の壁の理解
オーストリア、ドイツ、スイス、リヒテンシュタイン、イタリア北部などではドイツ語が母国語として使われています。
イタリアはイタリア語、フランスはフランス語となっています。(当然ですね(笑))
ただし、ほとんどの国で第一外国語として英語が使われています。
もちろん行きたい国の母国語が使えるのがベストですが、実際のところ、外国人選手は第一外国語の英語でアドバイスを受けることが多い様です。
そこで第一外国語で話すときの注意点があります。
第一外国語で指導を受ける時の注意点
状況としては、コーチと選手がお互いに第一外国語でスキーに関しての会話をするときです。
まず、自分はもちろん、相手も母国語で無い言葉でアドバイスしているということを理解すること。
「この人のアドバイスってシンプルだな~」
って思ったら要注意。
母国語で無い言葉でアドバイスするため、表現が限られます。
さらにそれを日本人に分かるような表現をしなければならないので、さらに限られます。
すなわち、良くも悪くもシンプルなアドバイスになります。
シンプルなアドバイスをそのまま受け取ってしまうとコーチにとっても、選手にとっても思っているような滑りとは違うものになっていきます。
スキーの基本がシンプルなところにある、と言うのは1つの真実だと思いますが、アルペンスキーは本当に様々な状況の中で競技が行われるスポーツです。
全てがシンプルで言い表せるものではないのです。これを念頭に置いて、コーチとコミュニケーションを取り続けること。
コーチが、言葉の壁の中で何を伝えようとして、何を割愛しているのか。常に、自分の中で疑問を持ち、質問し続けることです。
自分の頭の中だけで勝手に理解したつもりになっていないか、それをチェックし続けましょう。
解釈ミスの多い英語アドバイス
“keep your middle position!”
なんとなく、「中腰」とだけ訳してしまいたくなりますが、それだけではただの動きの無い滑りになってしまいます。
「常に脚の曲げ伸ばしが使える中間姿勢」とでも言えましょうか。
結果的に腰高の時もあれば、腰低の時もあると言うことになります。
“push it!”
「押せ!」ですが、これは攻めろの意。
これを真に受けて、エッジングを強くしてしまうと減速に繋がります。0.1秒を競い合うアルペンスキーでは毎ターン少しづつ減速してしまうと、ゴールをした時点では大きく遅れてしまっています。
このように色々な場面で表現や感じ方にズレが生じる事が少なくないので、どこに言葉の壁があるのかを理解し、コーチとコミュニケーションを取ることが重要になります。
以上、【外国のコーチに教わる前に押さえるべきこと】の前半でした。
次は【外国のコーチに教わる前に押さえるべきこと】の後半について記事を書いていこうと思います。